【失敗しないSalesforce導入】#1 − DXの目指す姿を描く時に考えるべき4つのポイント

株式会社こころみでは、傾聴型業務可視化ソリューション ”ディープリスニングコンサルティング” を通じて、さまざまな企業の業務変革を支援しています。先日開催したセミナーでは、「失敗しないSalesforce導入をいかに実現するか〜導入から成果創出まで押さえるべきポイント〜」と題して、営業DXの中心となる Salesforceの導入をテーマに講演を行いました。
本ブログではこの講演内容からトピックをピックアップして解説していきます。
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第1回は、「DXの目指す姿を描く時に考えるべき4つのポイント」です。
まずは、前提となるDX推進の「考え方」を考えることから始めます。
「Salesforceを導入しよう」「営業DXを推進したい」等、業務変革やデジタルトランスフォーメーションを進めようと考える時の「考え方」です。
基本の進め方の重要なステップが、次の3つです。
- 現状の業務と課題を把握する
- 目指す姿を描く
- 変革を設計・計画する

問題解決の基本的な考え方と同様でもあるので、あまり違和感はないのではないでしょうか。
「①現状の業務と課題を把握する」については、弊社のディープリスニング・コンサルティングが最も強みを発揮する部分でもあり、別記事であらためて説明します。
本記事では、「②目指す姿を描く」について、どう考えたらいいのか、考えてみましょう。
目指す姿はどう描くべきか?
目指す姿といっても、「会社全体の」なのか、「営業の」なのか、または「システム全体の」なのかによって考慮する範囲や抽象度が変わってくるので、ここでは認識を合わせるために、よくあるケースとして、Salesforce導入など「営業DXの」目指す姿を例に話を進めます。
結論から言うと、目指す姿は以下の4つのポイントを考慮にいれて描くことをおすすめします。

これまで経験してきた中で、およそこれらの観点が盛り込まれれば上手く描けた、逆に、これらが欠けていたから上手く描けなかった、と言う経験則からのまとめです。
1. 現状の課題
よくあるケースとしては、この「現状の課題」を解決することをメインに描くパターン。もちろん重要です。現状すでに顕在化してる課題は、当然それを解決してほしいと多くの人が望むので、盛り込むべきです。
たとえば、「見積作成で、金額設定と上長承認のワークフローと見積書作成で、それぞれ別のシステムに社名と金額と条件を手入力しないといけないので面倒すぎる」など不満が溜まっているとすれば、目指す姿でそれが解決されるようにはしたいですよね。
ただし、「現状の課題」からのみ考えられた「目指す姿」では、長期的なゴールや抜本的な改善にはつながりにくいです。描いた理想像が現状の課題から「だけ」で作られていないかを見直しましょう。課題の裏返しの理想像では、業務の基本構造が現在のままである前提となり、構造的な改善にはつながらないという問題が生じます。
2. 自社の強み・特殊性
今後も活かすべき自社の強みを把握し、「目指す姿」にも反映させましょう。
たまに聞く残念なケースとしては、「外部の知見をたよりに、営業プロセスを刷新したが、既存顧客が違和感を感じて去ってしまった」のように、その会社が元々持っていた強み(この例では、既顧客との強いつながり)を理解せずに、変革を作ってしまうケースです。
顧客とのつながりだけでなく、長年培われた製造ノウハウや、ベテラン社員が支える臨機応変な対応力、などあるかもしれません。
ただし、少し注意が必要なのは、しばしば聞かれる「うちの会社は特殊だから(一般的なベストプラクティスとか使えない)」といった言葉です。その「特殊性」は、企業の成長を生み出す「強み」なのか、もしくは、過去からなんとなく繰り返されてきただけの「惰性」なのか、きちんと切り分け、残して活かすべきものと、捨てて作り替えるべきものとして、盛り込むのが大事です。
よく、「強みなんてわからない、強みと言われても…」とおっしゃる方がいらっしゃいます。組織の中にいるご自身たちでは、組織のことを客観的にみることがなかなか難しいため、すぐには思いつかないこともあるでしょう。その場合はやはり外部の力を借りてでも理解しておきたいところです。
3. ベストプラクティス
非常に重要です。しかし、社内にベストプラクティスを知る人がいないときには、あまり意識されずに進められてしまうことが多いのも事実です。
例えば、Salesforceを活用するにもベストプラクティスがあります。
Salesforceが柔軟に作り込めるプラットフォームだと言って、全ての画面や動きを開発言語(Visualforce, Apexなど)で作り込んだとしたらどうでしょう?Salesforceを少しでも知る方なら、「そんなことしたら今後変更を加えるたびに開発を入れることになって、機能追加や改修の動きが遅くなるし、コストもかかるし、Salesforce入れた意味ないよね?」と思われるのではないでしょうか。
また別の例で、営業プロセスにもベストプラクティスがあります。「THE MODEL」と呼ばれる営業管理プロセスです。
ベストプラクティスをそのまま取り入れることが正しいというわけではありませんが、世の中で成果が出ている方法=ベストプラクティスを知らずに目指す姿を描くのか、知って描くのか、全く出来上がりが違ってくることは想像に難くないのではないでしょうか。
フランス料理のことを知らない人が、フランス料理を始めようとするようなものです。
テクノロジーや業務プロセス、それぞれの業界標準や業界最先端を理解する人が社内にいれば一番いいのですが、もしいないのであれば、やはり情報を集めて学ぶなり、詳しい人を検討メンバーに入れるなど、知見を手に入れる必要はあるでしょう。
4. 2-3年後の業務、ビジョン/ミッション
今後自社がどんなビジネスを作っていくのか、これを理解し、齟齬のないよう、目指す姿を描く必要があります。
ビジョンやミッションが抽象度の高いもので、システムや業務プロセスには影響しないものであれば、あまり意識しなくてもよいかもしれません。
しかし、2-3年後の業務となるとどうでしょうか?例えば、「今はB2Bのビジネスをやっているが、B2Cもやる可能性がある」「今は都度注文のサービスだが、いずれサブスクリプション型に変える考えがある」等です。
そのときに、今導入しようとしているシステムが使えなくなるなんてことはないですか?その変化も吸収できるシステムでしょうか?
将来の計画は不確定だとしても、想定される変化に対して「対応できない」システムやプロセスを導入するのは得策ではありませんよね。

4つのポイントから目指す姿を描く
では、この4つのポイントからどのように目指す姿を描くのか。
基本となる考え方は次のとおりです。
- 「ベストプラクティス」を基本として全体構想を描く
- 自社の状況に応じて調整は必要。ベストプラクティスを過信してそのまま真似するのはNG
- 調整する場合は、ベストプラクティスのもつ本質的な強みを損なわないよう注意
- 「自社の現状の課題」の解決策を含める
- 「課題」が「なぜ」起こっているか、の「なぜ」を繰り返す真因分析により、本質的な原因を特定する
- 原因の解決策を定めて、目指す姿に含める
- 「自社の強み、特殊性」から「強み」を活かす策を含める
- 「自社の強み、特殊性」を把握する
- 残すべき「強み」と捨てるべき「惰性」を見極める
- 「強み」を活かす仕組みをつくり、目指す姿に含める
- 「2-3年後の業務、ミッション/ビジョン」に対応できるかどうかをチェックする
- 将来の変化は正確に特定できないものの、起こりうるシナリオを想定して、「対応できるか」と「変化を活かせるか」を確認する。
- 変化にも、規模の変化、質・速度の変化、構造の変化を考慮する。

誰が「目指す姿」を描くのか?描けるのか?
なかなか難しい問題です。
営業DXのようなテーマであれば、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)といったデジタル推進のリーダーがいれば適任かもしれません。が、多くの組織にはいないでしょう。
情報システム部のある組織の場合によく聞くのは、営業や業務部門は「システムの話なんだから、情シスがやるべき」と言うものの、情報システム部門は「営業のDXなんだから営業部門がやるべき」と、なかなかまとめられないケースです。
というのは、この「目指す姿」において描くべき要素がシステムだけではないため、難易度が高いのです。少なくとも、営業DXを考える時には、以下の3つの要素を描く必要があります。
- テクノロジー(システム、ツール)
- プロセス
- 人・組織
(この3つについては、追って別の記事で説明します。)
テクノロジーはシステム部、プロセスは営業部、人・組織は人事部となるでしょうか。とは限りませんが、この3つの要素について、「ベストプラクティス」「2-3年後の業務、ビジョン・ミッション」「現状の課題」「自社の強み・特殊性」を考えることができる人またはチームを揃えたいところです。
さらに難しいのは、
- 「ベストプラクティス」・・・業界・技術の視座
- 「2-3年後の業務」・・・経営の視座
- 「現状の課題」・・・現場の視座
- 「自社の強み・特殊性」・・・社外からの視座
とそれぞれ視座が異なるため、全体をバランスよく考えることができる人材が限られがちな点です。
となると、仮に営業DXを推進することを考えるなら、このような人材を、内部で育成するか、社外から採用してくるか、外部人材として調達してくるかを検討する必要があります。
まとめ
今回は、「DXの目指す姿を描く時に考えるべき4つのポイント」について考えてみました。皆さまのご経験と照らし合わせて、いかがでしたでしょうか?
「4つのポイント」は分かったとしても、それが「できる人材は限られがち」である、という結論では救いがないかもしれませんが、それはまさに今「DX人材の不足」が叫ばれる昨今の状況を表しているのだと思います。ちょうど2日前にもこのような記事が出ていました。
日経クロステック:「DXに必要な人材はデジタル人材にあらず、そんな単純な理屈も分からない経営者の愚」
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